Is Your Company a "Boring Game"? Why Executives Must Evolve into Game Producers

なぜ、仕事は5分で飽きるのに、ゲームは朝まで続くのでしょうか? 厳しい現実ですが、あなたが設計した「組織というゲーム」が、あまりにもつまらないからです。これからのリーダーに必要なのは「ゲームプロデューサー」への進化です。

Is Your Company a "Boring Game"? Why Executives Must Evolve into Game Producers

あなたの会社は「退屈なゲーム」
になっていないか?

経営者が「ゲームプロデューサー」へと進化すべき理由

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なぜ、仕事は5分で飽きるのに、ゲームは朝まで続くのか

なぜ優秀な人材がログアウト(離職)するのか。
なぜ、社員が受け身になり、指示待ちの状態が続いているのか。

それは彼らのやる気の問題ではありません。 厳しい言い方になりますが、あなたが設計した「組織というゲーム」が、あまりにもつまらないからです。

ゲームの世界では、プレイヤーを何時間も熱中させるために緻密な計算がなされています。一方で、多くの企業組織は、ルールが曖昧で、いつ勝てるか分からず、フィードバックもない。これでは、どんなに優秀なプレイヤーでも、ログイン(出社)するのが億劫になるのは当然です。

今日は、経営における「ゲーミフィケーション」の本質を解き明かし、経営者が「ゲームプロデューサー」へと進化するための道筋を示します。

「仕事は遊びではない」という経営者へ

「仕事をゲームにする」と提案すると、必ずと言っていいほど眉をひそめる経営者がいるでしょう。

うちは真剣にビジネスをやっているんだ。遊び場ではない

その指摘は、完全に正しい。ビジネスは遊びではない。利益を生み出し、社員の生活を支える、極めてシビアな現実です。

しかし、だからこそ問いたいです。

真剣勝負だからこそ、ゲームのメカニズムが必要なのではないか?

プロのスポーツ選手やeスポーツプレイヤーを見ていただきたいです。彼らは「遊び半分」でプレイしているでしょうかか? いいえ、彼らは極限の集中状態(フロー)にあり、勝利のために血の滲むような努力をしています。 彼らがそこまで没頭できるのは、その競技が「明確なルール」「公正なスコア」「挑戦的な難易度」によって、人間の闘争本能を刺激するように設計されているからです

私が提案するゲーミフィケーションとは、仕事を「娯楽(Entertainment)」にすることではないです。 仕事を、人間が最もポテンシャルを発揮できる「競技(Engagement)」へと昇華させるための構造設計のことです。

「真面目な仕事」を「退屈な苦役」にするか、それとも「熱狂的な競技」にしますか。 経営者がやるべきは、精神論で真面目さを強要することではなく、誰もが本気になれるフィールド(仕組み)を作ることです。


1. 多くの企業が陥る「フロー」への誤解

「フロー経営」や「社員のウェルビーイング」という言葉を聞いた時、多くの経営者が致命的な勘違いをしています。 オフィスをおしゃれにし、リラクゼーションルームを設け、あるいは業務中に瞑想の時間を設ける……。これらは「休息」の質を高める施策としては正しいですが、組織のパフォーマンスを高める「フロー」とは別物です。

リラックスしている状態は「フロー」ではありません。

ビジネスにおける真のフローとは、「自らの能力を極限まで発揮し、困難な課題に挑んでいる時の没入状態」を指します。それは休息ではなく、ある種の「戦闘状態」に近いものです。


2. 「真のフロー経営」とは何か

心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー体験」を組織に実装するということは、社員を安らがせることではなく、「高潔なストレス(Positive Stress)」を設計することに他なりません。

人がゲームに没頭する時、少なくとも必ず以下の3つの条件が揃っています。

  • 明確なゴール (Clear Goals): 「今、何を倒すべきか」が分かっている。
  • 即時のフィードバック (Immediate Feedback): 自分の行動が正解か不正解か、瞬時にスコアや反応として返ってくる。
  • 能力と挑戦の均衡 (Balance): 簡単すぎて退屈でもなく、難しすぎて不安でもない、ギリギリの難易度設定。
Reconstructing Flow - ロジカルシンキングから考えた「フロー」というもの
最近、仕事や学びで「気づいたら何時間も没頭していた」瞬間はあっただろうか。/When was the last time you found yourself so immersed in work or learning that hours flew by?/如果“专注到天黑”只发生在游戏里,那你可能错过了心流的真正价值。 Available in 🇯🇵Japanese/日本語, 🇬🇧English and 🇨🇳Chinese/中文.

真のフロー経営とは、社員一人ひとりに対してこの3条件を整え、彼らが「仕事というゲーム」に夢中で取り組める環境(メカニズム)を構築することです。


3. なぜ、従来のマネジメントでは「フロー」が起きないのか

フローに入るための3条件(ゴール・フィードバック・バランス)は、実は従来の一般的な企業マネジメントと「真逆」の構造をしています。これが、多くの組織が停滞する「システムエラー」の正体です。

ここでは最新の認知科学とサイバネティクス(制御工学)の視点から、その致命的な欠陥をメスを入れる。

  • ゴールの欠陥(遠すぎる): ゲームでは「この敵を倒せ」と明確ですが、企業では「今期の売上目標達成」のような、半年・1年先の遠すぎるゴールしか示されません。今日何に勝てばいいか分かりません。
  • フィードバックの欠陥(遅すぎる):ゲームではボタンを押した瞬間に反応(スコアや音)が返ってきますが、企業では「半年に一回の人事考課」まで正解が分かりません。これが最大の問題です。脳科学の知見によれば、行動と結果の間に時間的な遅れ(遅延)が生じると、私たちの脳は因果関係を正しく学習できなくなります。報酬やフィードバックは、行動の直後に与えられなければ、学習シグナルとして機能しないことが研究で示されています。半年後に「あの時の動きは良かった」と褒められても、それは脳にとって単なるノイズであり、次の行動変容にはつながらないのです。
  • バランスの欠陥(固定されすぎている): ゲームはプレイヤーのレベルに合わせて敵が強くなりますが、企業では「役職」で仕事が固定されます。一度昇進したら降格しない「硬直的な役職」により、能力と課題のミスマッチが放置される。
参考

……報酬予測誤差に関する研究(Schultz et al., 1997)でも示されているように、即時フィードバックがない環境では学習効果が著しく低下します。

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■ 構造が生み出す「人間トースター」の悲劇

ここで誤解してはいけないのは、組織のフィードバックスピードが遅いのは、マネージャー個人の能力が低いからではない、という点です。むしろ、彼らは誰よりも真面目に働いています。

問題は、「あらゆる情報の通過と意思決定を、マネージャーという一点に集中させる」という、前時代的な回線設計(アーキテクチャ)そのものにあります。

アンディ・グローブは、生産工程で流れが詰まる場所を「トースター(律速段階)」と呼びました。多くの組織では、優秀なマネージャーほど、承認作業、定例会議、部下のケアといった膨大なタスクを抱え込まされ、構造的に「トースター」になることを強いられています。彼らが情報を止めたくて止めているわけではありません。システムが彼らをボトルネックに仕立て上げているのです。

本来、組織という神経系における「信号の増幅器(Signal Amplifier)」として、ビジョンを伝え、部下を鼓舞すべき彼らが、単なる「情報の交通整理」で忙殺されている。これこそが、組織最大の損失であり、優秀なプレイヤー(部下)とプロデューサー(マネージャー)の双方を疲弊させる「クソゲー」の正体です。

だからこそ、経営者が介入し、この「配線」を変える必要があるのです。

つまり、悪気はなくとも、従来の「管理」を真面目にやればやるほど、構造的にフロー(没入)から遠ざかってしまうのです。


4. 経営者の役割転換:管理から「レベルデザイン」へ

この構造的欠陥を打破するために必要なのが、マインドセットの転換です。 「部下を管理(Manage)する」という思考を捨て、「環境を設計(Design)する」という、まさに「ゲームプロデューサー」の視点を持つのです。

プロデューサーの仕事は、プレイヤーを監視することではありません。プレイヤーが最高に楽しめる(没入できる)ための「レベルデザイン」を行うことです。

具体的には、以下の3点に介入し、組織の「神経回路」を再配線する。

1. クエスト化 (Short-term Goals):OKRを「攻略対象」に変換せよ

では、具体的にどう設計するか。 多くの企業が導入しているOKR (Objectives and Key Results) は、実はゲームデザインと極めて相性が良い。しかし、ほとんどの企業はOKRを「静的なノルマ管理」にしてしまっている。これではフローは起きない。

OKRを「クエスト」として再定義するのだ。

  • Objective (O) = メインクエスト(到達すべき世界観) 「業界No.1になる」「顧客満足度を上げる」といった定性的なゴール。これはゲームで言えば「魔王を倒す」「平和を取り戻す」という世界観の共有だ。
  • Key Results (KR) = 勝利条件(クリア条件) ここが重要だ。KRを「売上120%」という単なる数字にするのではなく、「今週倒すべき中ボス」として因数分解する。

例えば、「商談数20件」というKRがあるなら、それを「今週中に5人のキーマンと接触し、"Yes"と言わせる」という具体的なアクションクエストに変換して渡すこと。 遠い四半期末の数字(結果)ではなく、今日・今週のアクション(行動)にフォーカスさせる。

「OKRの達成」=「クエストクリア」という直感的な構造を作り、KRの進捗バーが伸びるたびに、ドーパミンが出るような「攻略の実感」を持たせること。これが、形骸化したOKRに命を吹き込む唯一の方法である。

2. スコアボード化 (Real-time Feedback):【Game Feel】論理を超えた「手触り」の正体

■ なぜ、今のOKRは「砂を噛むように」つまらないのか

ここまで、OKRをクエスト化し、評価をランクマッチ化するという「構造」の話をしてきました。 しかし、これだけではまだ不十分です。

完璧なルールがあるのに、なぜかプレイしたくないゲームがあるように、完璧なOKRがあるのに、なぜかワクワクしない組織がある。

その正体は、「Game Feel(ゲームフィール)」の欠如です。

ゲームデザイナーの間では「Juiciness(ジューシーさ)」とも呼ばれる概念ですが、これはプレイヤーがアクションを起こした瞬間に返ってくる「感覚的な手応え」のことです。 例えば、マリオがブロックを叩いた時の「カコーン!」という音、敵を踏んだ時の「プンッ」という弾力感。この0.1秒の視聴覚フィードバック(演出)があるからこそ、プレイヤーは何度でもジャンプしたくなるのです。

■ ビジネスにおける「ジューシーさ」を設計する

ひるがえって、あなたの会社の業務ツールやコミュニケーションを見てください。

  • 大きな契約を取ってSFA(営業支援ツール)に入力した瞬間、無味乾燥な「保存しました」の文字が出るだけ。
  • 素晴らしい企画書をSlackで提出したのに、上司からの反応は無言の「既読」のみ。

これでは、マリオがジャンプしても音が鳴らないのと同じです。「手触り」がないのです。 どんなに高尚な目標(OKR)があっても、日々の1クリック、1アクションに対する「快感」がなければ、脳は徐々にその行動を「退屈な作業」として処理し始めます。

経営者・プロデューサーがやるべき「Game Feel」の演出とは、例えば以下のようなものです。

  1. デジタルの紙吹雪 (Digital Confetti): タスク管理ツール(Asanaなど)では、タスクを完了すると画面上にユニコーンが飛んだり虹が出たりします。これは子供騙しではありません。脳に「完了=快感」と刷り込むための重要なUXです。自社のチャットツールで、成果報告に対しては「過剰なほどのスタンプや称賛絵文字」が飛び交う文化(ルール)を作るのも一つの演出です。
  2. 勝利のゴング (Victory Sound): アナログですが、営業部で成約時にドラを鳴らす、開発部でリリース時に拍手喝采をする。この「聴覚的なフィードバック」は、理屈を超えてチームの士気を鼓舞します。

「仕事に演出なんて不要だ」と思うかもしれません。 しかし、神は細部に宿ります。 ロジカルな目標設定(骨格)に、エモーショナルなGame Feel(血肉)が通った時、初めてその組織は「生きたゲーム」として動き出すのです。

■ 既存のスコアボードの問題:それは「監視ツール」か、「プレイヤーUI」か?

「スコアボードなら、うちはSFA(営業支援ツール)やBIツールで毎日数字を出しているよ」 そう反論する経営者も多いでしょう。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

あなたの会社のスコアボードは、誰のために設計されていますか?

多くの企業のダッシュボードは、経営陣が「進捗が遅れていないか」をチェックするための「監視モニター(Surveillance)」になっています。 社員からすれば、それは「あとこれだけ足りないぞ」と詰められるための材料でしかありません。これでは「恐怖」や「義務感」は生まれても、「没入(フロー)」は絶対に生まれません。

ゲーミフィケーションにおけるスコアボードは、全く思想が異なります。 それは管理者のためのものではなく、プレイヤー(社員)自身のための「UI(ユーザーインターフェース)」でなければなりません。

ここで重要なのが、先ほど述べた「Game Feel(手触り)」という概念への昇華です。

1. 監視ではなく「自分の成長」を映す

既存のダッシュボードの多くは「結果(売上額など)」しか表示しません。しかしゲームのUIは、「経験値バー」や「スキル熟練度」など、行動と成長のプロセスを可視化します。「会社への貢献(ノルマ)」だけでなく、「自分のレベルアップ」が可視化されるからこそ、プレイヤーは自分のために数字を追うようになります。

2. 静的な数字ではなく「動的な演出」を入れる

ここでもGame Feelが重要です。

ただExcelの数字が「9」から「10」に変わるだけでは、脳は興奮しません。

ゲームでは、レベルが上がった瞬間にファンファーレが鳴り、光が弾けます。

ビジネスでも同様に、目標達成の瞬間にチャットツールでBotが称賛メッセージを流す、オフィスのモニターでその社員のアイコンが跳ねる、といった「感覚的な演出(Juiciness)」を意図的に組み込むのです。

「管理するための数字」から、「熱狂するためのフィードバック」へ。

既存のツールをこの視点で再定義できるかどうかが、ただの管理職と、優れたゲームプロデューサーの分かれ道です。

重要なのは、バッジやボーナスといった「外的報酬」ではない。「自分の行動が世界(組織)に影響を与えた」という即時フィードバックそのものを「内的報酬」に変えることだ。 マネージャーは、1on1やチャットツールを通じて、部下の行動に対するフィードバックの「帯域幅」を広げ、遅延なく「Good/Bad」のシグナルを打ち返すマシーンにならなくてはならない。

3. マッチング調整 (Dynamic Balance)

役職を「身分」ではなく、「現在の対戦ランク(リーグ)」と再定義すること。 ここが最も重要です。多くの日本企業では、役職を「積み上げ式のレベル(一度上がれば下がらない)」と捉えがちですが、これでは一度ミスマッチが起きると、本人はプレッシャー(不安)で潰れるか、能力を持て余して(退屈)腐るかのどちらかです。

  • Case A(退屈): 優秀なベテランがルーチンワークで飽きているなら、役職に関係なく、あえて未知の難題(新規事業のリーダーなど)を与え、意図的に「ハラハラする領域」へ送り込む。
  • Case B(不安): マネージャーに昇進したばかりでプレッシャーに潰れそうな人材がいれば、一時的に権限を縮小し、確実に勝てる業務(プレイング業務)に集中させ、自信(フロー状態)を取り戻させる。

組織における役職とは、その期間のパフォーマンスに対する「対戦の場」に過ぎません。 ゲームのランクマッチのように、調子が良く成果が出ているなら「上位リーグ(昇格)」へ送り込み、苦戦しているなら一時的に「適正リーグ(降格)」へ戻して再調整させる。

「昇格・降格はよくあることだ」という文化を作ることです。それは懲罰ではなく、そのプレイヤーが最もフロー状態に入れる「適正な難易度」へのマッチング調整なのです。

社員を無理やり働かせるのではなく、「つい夢中になってしまうメカニズム」を意図的に組み込む。そうやってユーザーを自律的に動くよう誘導することこそが、最強の組織を作る近道です。それがこれからのリーダーに求められる「プロデュース能力」です。

結び:あなたの組織は「プレイしたいゲーム」か?

「仕事をゲームにするなんて不謹慎だ」という声があるかもしれません。

しかし、人生の大半を費やす仕事を、退屈な苦役にするのと、自分の成長を実感できるエキサイティングな挑戦にするのとでは、どちらが人間的でしょうか。

答えは明白です。 今日から、管理することをやめ、熱狂を設計してください。

まずは、部下や自分自身の今の業務レベルが「退屈領域」にあるか「不安領域」にあるかを見極め、適切な「対戦ランク」へマッチングし直すことから、あなたのプロデュース業は始まります。


【参考】プレイヤーとしての「あなた」への戦略ガイド

ここまで「ゲームを作る側(プロデューサー)」としての組織戦略を検討してきました。しかし、忘れてはならないのは、あなた自身もまた、広大なビジネス界というオープンワールドを生きる「一人のプレイヤー」であるということです。

もし、組織の設計以前に、あなた自身のキャリアや日々の業務が「バグだらけのゲーム」のように感じられ、コントロールを失っているならば、組織論を語る前にまず自分自身の「攻略本」を取り戻す必要があります。

かつて私が公開した以下の記事では、リーダー自身がプレイヤーとして状況を打破するための「オープンワールドRPGフレームワーク」について詳述しています。組織を変える前に、まず自分自身のゲームを取り戻したい方は、併せて参照してください。

Why Your Job Feels Like a “Broken Game”: You’re Missing the Strategy Guide — The Open-World RPG Framework for Frustrated Leaders to Regain Control
仕事が「クソゲー」なのは、攻略本を読んでいないからだ〜短気なリーダーが覚醒する「オープンワールドRPG」仕事術〜:そろそろ、他人に預けたコントローラーを奪い返す時です。
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